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人間の身勝手と作り上げられたスターの話、かもしれない

2020.01.09 (Thu)

何だか不思議な小説を読んでしまった…。


多和田葉子『雪の練習生』

202001090131171e8.jpg


そもそもの設定がシロクマ3代の物語、
1話目のおばあちゃんクマは、鉛筆なめなめ、
自分で自伝の原稿を書き、
昔の知り合いであるオットセイが
編集長を務める雑誌に持ち込むのである。

そんな荒唐無稽さも、
舞台がソ連時代のモスクワだけに、
単にファンタジー小説と括ってしまうより
「おとぎの国(パルナスのCMよりw)だし、
ボリショイサーカスの国だし、
そんなこともあるかもねー」くらいに
受け止めて読み進めてしまう。

何と言っても3話目の孫、
クヌートが実在したシロクマであることが、
ファンタジー感を薄めている。


「育児放棄され人間に育てられたシロクマ」
として話題になった頃は、
ニュースで見るたび「クヌート可愛い〜😍」と
騒いだもんである。

2話目の主人公は本当のクヌートのお母さん、
トスカ。

旧東独のサーカスにいて、
ベルリンの壁崩壊を経て、
サーカスの解散で離れ離れになった
盟友の女性調教師(この人も実在した)の伝記を、
トスカが書いている形。

最後にトスカなりの、育児放棄ではなく敢えて、
他の動物(人間)に息子クヌートを託した理由が
述べられる。


普段はパンダマニアなのでパンダばかり見てて、
パンダなりに色々考えてるんだろうなぁ、と
思う。

シロクマもシロクマなりに、
色々考えてるかもしれない。

特にクヌートは
メディアに「可哀想な子供」として
持ち上げられ、
何故か地球温暖化のプロパガンダの
シンボルにまでされる。

5歳の若さで亡くなったクヌート。

人間の思惑に振り回された
生涯だったんじゃないか、と悲しくなる。


先日放送された
NHKの『ファミリーヒストリー』は、
初の人間以外のゲストとして、
白浜アドベンチャーワールドの末っ子パンダ、
彩浜が取り上げられた。

パンダを保護、繁殖させたいというのも、
人間の勝手な思惑かもしれないけど、
関わった人々の思いや、
先祖の生命力、
母パンダ良浜の母性などに
胸が熱くなる番組だった。


この小説も、非現実的なフィクションだけど、
クヌートの『ファミリーヒストリー』として
見ると、動物好きには堪らない一冊かも。

そしてきっと、クヌートが不幸な生い立ちの末
夭逝した悲劇の主人公ではなく、
したたかで強い意志を持った一族の子孫として、
逞しい存在に見えてくるように思う。


☆この文章はFacebookに書いてみて、
ちょっと気に入ったので、転記しました。

これを書くために、
クヌートのこと、トスカのこと、
クヌートを育てた飼育員さんのことなど
色々調べてみました。

作者の多和田葉子さんは、クヌートが亡くなる
少し前まで、ベルリン動物園に取材に
通われていたようです。

映画まで作られ、ブームになった
小さい頃とは違い、ごく僅かな観客。
 
その様子に多和田さんが何を見て何を思い、
この物語を書かれたのかなー、と思いました。
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テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学

01:34  |  読書日記  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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